運命の出会い 8

ストーニーレイクで彼と過ごした7月初めの3日間は今振り返ってみて、夢のような時間だった。
細かいことはあまり覚えていない。それまでに彼が毎日欠かさず書いてくれた手紙によって、彼の人柄や性格などがわかってきていたことは確かだ。
彼の最大の趣味は写真。あらゆる機会に彼が撮りまくった多くの写真が残されているおかげで、遠い過去の思い出が甦ってくる。
23歳になる直前の彼が、本気で結婚の相手として私を選ぼうとしていたことも、今から思えばせっかちすぎるし、20になったばかりで、世間知らずな私にしてみれば、初めて申し込まれて決断できず、迷ったとしても無理もない。

海と言えるほど大きなミシガン湖の周囲に点在する小さな入り江、ストーニーレイク湖畔は7月4日の合衆国独立記念日をはさんでの3日間、私たち二人だけの世界だった。
食事には近くの町まででかけたり、サンドイッチなどの軽食を買ってきて浜辺で食べたりした。
私には、テントで共同生活をしていない時に使えるように、キャンプ場の建物の中に瀟洒な個室を与えられていた。
彼は3日の昼ごろ到着し、2泊を自分の車の中で眠った。 5日の夜半にシカゴへ帰る前に(多分車中で書いて)私の郵便受けに差し入れて帰った彼の手紙が残っている。

洋ちゃん、この三日間はとても楽しかった。色々心配かけたり、怒らしたりしてごめんなさい。でも僕が洋ちゃんを本当に愛しているから色々なこともしたくなるの。洋ちゃんには迷惑かも知れないが・・・
もう僕の来るのはいや?もうこりたかしら。でも僕は来たい。いい車が欲しい。一生懸命に働いて少しでも良い車が欲しいと思う。洋ちゃんに全然、心配をかけずにここまで来られるような。
この手紙を読む頃は、僕はシカゴで又働いているはず。洋ちゃんも又、キャンプで忙しい生活に戻った頃だろうね。
日本に帰るまで待てと言うのなら待つ。しかしもう僕の生活から洋ちゃんをマイナスすると残るものは何もありやしない。だから悲しまさないで。男らしくないと言うかもしれない。でも僕にとっては仕方がない。
新しい住所は封筒に記しておいたけれど念の為、164 W. Huron St. Chicago, Ill.

忙しいだろうから毎日とは言わない。書ける時に返事を書いて。僕は毎日書く。毎日書かねばとてもたまらない。
この次会えるのは何時か知らないけれど、なるべく早く会いたい。それまで元気で、風邪ひかぬように。体だけは大事に。あまり冷たい水の中で泳がないように。
もう今日はこれ以上書けない。今はまだここにいるのだから。あと何時間の后には別れねばならぬと思うと胸は一杯になる。女々しいかしら。それでもいい。無事にシカゴに着くよう祈ってくれてるね。
どうも有難う。本当に楽しかった。いい思い出になる。写真は早く現像焼き付けして送るようにする。
では又、この次の手紙はシカゴから。元気で
(僕は馬鹿かしら?)崇 7月5日ストーニーレイクにてI love you. I love you
( 用紙の余白は I love you.で満たされていた。文中傍線を引いたのは最近改めて読んだ洋子)

シカゴに到着後すぐに書いた手紙
今やっと着いたところ。時に午前7時5分。途中で何回か、あまり眠たいのでよっぽど車をとめて寝ちまおうかと思ったけれど、とうとう頑張って帰ってきた。
洋ちゃんのお祈りが効いて、無事ケガも事故もなく、帰ってこられた。本当にありがとう。車の調子はよくない。よく故障(大きな)が起こらなかったものだと感心した。ブレーキは片方しかきかず、スピードもだせないのでものすごく時間がかかった。
会社には間に合う。これから8時間働く。体はボーッとしてやっぱり疲れている。でも、少しでもよけいに金をもうけて洋ちゃんのために何か、どんなつまらぬものであっても、一つでもよけいに何か買ってあげたいから。
ではこれから、会社に行く。帰って来てから、又書く。今晩は良く眠るから心配しないで。元気を出して。風邪ひかぬように。僕の可愛い可愛い洋ちゃんへ。I love you. 崇

一晩眠って、翌日に書いた手紙:
この手紙を書いている以前に僕からの手紙はついてると思うから、もう無事に着いた事は分かっていると思う。よく帰れたと思う。色々心配かけてごめんなさい。
昨日はものすごくよく寝たので疲れもすっかり治ったようだ。会社でもそんなに疲れたとは感じなかった。新しい住居にも落ち着いた。会社にも近いし万事都合よく出来ている。
中略
あの自動車は実際、大変な代物だ。折角直したブレーキもかたちんばだし、もう二度とのらない。洋ちゃんにこれ以上心配かけるのはたまらない。
でも本当に僕はバカだよ。バカは死ななきゃなおらないと言うから、なおらないだろうけれど。よくもあんな車で180マイル(と言えば東京~京都間位)を行くんだものね。でも、僕を止め得るものはないよ。だからバカなんだろうけれどさ。
この調子なら、今後どこに住もうと、ケニヨンから行く調子でデニソンまでフットンで行くだろう。早くいい車を買いたい。洋ちゃんに心配かけずに行けるようにね。
中略

この2, 3日はシカゴもばかに涼しい。ミネワンカにいた時の様だ。だから思い出していけない。でもミシガン湖はいいね。あんなキャンプには行けないけど、シルバーレイクあたりのキャビンを一夏借りて住んでみたいね。ボートも買ったりして楽しい日を過ごせるような時は来ないものだろうかね。
今何してる?9時30分だけれど、キャンプで小さな子供たちに何か教えているのだろうか?そうそう、9時に寝るんだった。よく寝なさい。風邪なんかひかずに。
可愛い洋ちゃんに心配してもらうのは、涙が出るほど嬉しいけれど、とても可哀そうだから。でも本当に洋ちゃんは可愛いね。ではまた明日。 I love you. 7/7 崇

ストーニーレイクで彼と過ごした7月初めの3日間は今振り返ってみて、夢のような時間だった。
細かいことはあまり覚えていない。それまでに彼が毎日欠かさず書いてくれた手紙によって、彼の人柄や性格などがわかってきていたことは確かだ。
彼の最大の趣味は写真。あらゆる機会に彼が撮りまくった多くの写真が残されているおかげで、遠い過去の思い出が甦ってくる。
23歳になる直前の彼が、本気で結婚の相手として私を選ぼうとしていたことも、今から思えばせっかちすぎるし、20になったばかりで、世間知らずな私にしてみれば、初めて申し込まれて決断できず、迷ったとしても無理もない。

海と言えるほど大きなミシガン湖の周囲に点在する小さな入り江、ストーニーレイク湖畔は7月4日の合衆国独立記念日をはさんでの3日間、私たち二人だけの世界だった。
食事には近くの町まででかけたり、サンドイッチなどの軽食を買ってきて浜辺で食べたりした。
私には、テントで共同生活をしていない時に使えるように、キャンプ場の建物の中に瀟洒な個室を与えられていた。
彼は3日の昼ごろ到着し、2泊を自分の車の中で眠った。 5日の夜半にシカゴへ帰る前に(多分車中で書いて)私の郵便受けに差し入れて帰った彼の手紙が残っている。

洋ちゃん、この三日間はとても楽しかった。色々心配かけたり、怒らしたりしてごめんなさい。でも僕が洋ちゃんを本当に愛しているから色々なこともしたくなるの。洋ちゃんには迷惑かも知れないが・・・
もう僕の来るのはいや?もうこりたかしら。でも僕は来たい。いい車が欲しい。一生懸命に働いて少しでも良い車が欲しいと思う。洋ちゃんに全然、心配をかけずにここまで来られるような。
この手紙を読む頃は、僕はシカゴで又働いているはず。洋ちゃんも又、キャンプで忙しい生活に戻った頃だろうね。
日本に帰るまで待てと言うのなら待つ。しかしもう僕の生活から洋ちゃんをマイナスすると残るものは何もありやしない。だから悲しまさないで。男らしくないと言うかもしれない。でも僕にとっては仕方がない。
新しい住所は封筒に記しておいたけれど念の為、164 W. Huron St. Chicago, Ill.

忙しいだろうから毎日とは言わない。書ける時に返事を書いて。僕は毎日書く。毎日書かねばとてもたまらない。
この次会えるのは何時か知らないけれど、なるべく早く会いたい。それまで元気で、風邪ひかぬように。体だけは大事に。あまり冷たい水の中で泳がないように。
もう今日はこれ以上書けない。今はまだここにいるのだから。あと何時間の后には別れねばならぬと思うと胸は一杯になる。女々しいかしら。それでもいい。無事にシカゴに着くよう祈ってくれてるね。
どうも有難う。本当に楽しかった。いい思い出になる。写真は早く現像焼き付けして送るようにする。
では又、この次の手紙はシカゴから。元気で
(僕は馬鹿かしら?)崇 7月5日ストーニーレイクにてI love you. I love you
( 用紙の余白は I love you.で満たされていた。文中傍線を引いたのは最近改めて読んだ洋子)

シカゴに到着後すぐに書いた手紙
今やっと着いたところ。時に午前7時5分。途中で何回か、あまり眠たいのでよっぽど車をとめて寝ちまおうかと思ったけれど、とうとう頑張って帰ってきた。
洋ちゃんのお祈りが効いて、無事ケガも事故もなく、帰ってこられた。本当にありがとう。車の調子はよくない。よく故障(大きな)が起こらなかったものだと感心した。ブレーキは片方しかきかず、スピードもだせないのでものすごく時間がかかった。
会社には間に合う。これから8時間働く。体はボーッとしてやっぱり疲れている。でも、少しでもよけいに金をもうけて洋ちゃんのために何か、どんなつまらぬものであっても、一つでもよけいに何か買ってあげたいから。
ではこれから、会社に行く。帰って来てから、又書く。今晩は良く眠るから心配しないで。元気を出して。風邪ひかぬように。僕の可愛い可愛い洋ちゃんへ。I love you. 崇

一晩眠って、翌日に書いた手紙:
この手紙を書いている以前に僕からの手紙はついてると思うから、もう無事に着いた事は分かっていると思う。よく帰れたと思う。色々心配かけてごめんなさい。
昨日はものすごくよく寝たので疲れもすっかり治ったようだ。会社でもそんなに疲れたとは感じなかった。新しい住居にも落ち着いた。会社にも近いし万事都合よく出来ている。
中略
あの自動車は実際、大変な代物だ。折角直したブレーキもかたちんばだし、もう二度とのらない。洋ちゃんにこれ以上心配かけるのはたまらない。
でも本当に僕はバカだよ。バカは死ななきゃなおらないと言うから、なおらないだろうけれど。よくもあんな車で180マイル(と言えば東京~京都間位)を行くんだものね。でも、僕を止め得るものはないよ。だからバカなんだろうけれどさ。
この調子なら、今後どこに住もうと、ケニヨンから行く調子でデニソンまでフットンで行くだろう。早くいい車を買いたい。洋ちゃんに心配かけずに行けるようにね。
中略

この2, 3日はシカゴもばかに涼しい。ミネワンカにいた時の様だ。だから思い出していけない。でもミシガン湖はいいね。あんなキャンプには行けないけど、シルバーレイクあたりのキャビンを一夏借りて住んでみたいね。ボートも買ったりして楽しい日を過ごせるような時は来ないものだろうかね。
今何してる?9時30分だけれど、キャンプで小さな子供たちに何か教えているのだろうか?そうそう、9時に寝るんだった。よく寝なさい。風邪なんかひかずに。
可愛い洋ちゃんに心配してもらうのは、涙が出るほど嬉しいけれど、とても可哀そうだから。でも本当に洋ちゃんは可愛いね。ではまた明日。 I love you. 7/7 崇