運命の出会い 7
7月4日のアメリカ独立記念日の休暇をはさんで3日から5日までストーニー湖のキャンプにいる私を訪ねてくると言う。その前に届いた崇からの手紙を2通紹介する。
今日は日曜日。6月も残すは、あと三日。今週末はそちらに行けると思うと、元気も出る。自動車が故障なく行ってくれるといいんだが。
今日もテニスをした。少し慣れたとみえて、調子が出てきた。もっとも同じくらいの技量の人がいないので試合など出来ない。しても面白くないから・・・
今日、水泳しようかと思ったけれど、とても水は冷たそうだったから海辺(湖辺?)で日光浴。日焼けして色ばかり黒くなっても仕方ないんだが・・・ずっと果てしないミシガン湖を眺めて、ストーニーレイクはあの方向かな?なんて思いを巡らすと、なんだかますます淋しくなって胸がしめつけられそうになってきたので早く帰ってきた。
夏の間、土日曜日はもっぱらテニス、水泳などして過ごすことにした。無駄使いもしなくてすむし、体のためにもよいからね。

こんなに働いても体重はあまり減っていない。減らしたら怒るだろうと思って、ご飯を腹一杯食べている。もっとも朝は習慣のせいか(ケニヨンでは食べないから)コーヒー一杯位でどうしてもすましてしまう。それでも別にへばりもしない。一昨年・昨年も同じようにしていたんだからいいと思うがね。
キトウさんは中谷先生の車を買った。今日運転させてもらったけれど、やはり新しい(51年型)車はいいよ。あんなの運転できたらなあと思う。身分不相応だらうか?
明日からまた会社、土曜・日曜休みになると、月曜がよけい、いやに思える。
それから会社でSmith・Coronaのタイプライター(僕の兄貴の持っていたの)を売っているから、洋ちゃんが買うつもりがあるなら、買うよ。トランクは4,5種類、大きさによって分かれている。どんなのがいいか知らせてほしい。どうせ会えた時にゆっくり相談してもいいけれど。万年筆はウオーターマン位、高級品では、シェーファー、パーカーは見当たらない。ウオーターマンは有名だよ。その他、時計、ラジオ等、phonographは見当たらない。残念だ。洋ちゃんがシカゴに来れたら(夏の終わりにでも)、ゆっくり会社の陳列室で選んで注文出来るんだがね。
中略

昨日(土曜日)は2時間近くかけて洗濯した。大分ためてたから、やりがいがあったわけさ。しかし洗濯は自動洗濯機だからいいが、アイロンかけはいやだ。一枚ワイシャツかけたら20分かかった。で、止めた。第一夏は日曜以外、スーツを着る事もないからね。アイロンあてるのだけは苦手だ。
毎度土曜日はあれをしよう、これをしようと、普段働いていて出来ないこと(例えば荷物の整理など)をするつもりでいるんだが、結局何もせずじまいになる。シカゴの散髪はベラボーに高いので自分達でやることにした。当分虎刈りがはやるだろう。
何だか今日も現実的なことばかり、きたない字で書いてしまった様だ。ゴメンナサイ。
今、西山さん連中もでかけて、一人でこの手紙を書いている。
洋ちゃんは淋しいから本当の美も楽しみもわかると言ったけれど、人間ていうものは、そもそも淋しい存在ではないんだろうかね。どうも僕にはわからない。淋しいから洋ちゃんを愛したと言うかも知れない。しかし、淋しいから洋ちゃんの本当のよさを理解し得たと言うのならわかるけれど、もし洋ちゃんが 僕が淋しさをまぎらすために洋ちゃんを愛してるんだと言うのなら、文句があるね。僕は洋ちゃんの淋しさをまぎらす手段であってもかまわないけれど、洋ちゃんはそうではない。

ともかくあんまり僕に悲しい思いさせないでくれ。洋ちゃんが言おうとするところはよくわかる。僕自身淋しさに於いて人に負けない経験もしたし、今でも淋しい人間だ。でも洋ちゃんが何気なく言った言葉でも僕の心に針の如くつきささることもあるんだよ。
もう遅い(12時)明日は又出勤だから、また明日。オヤスミ。風邪ひかぬように。
6月27日 I love you. 崇

洋ちゃん、手紙ありがとう(28,9日付)
僕も元気です。今日は5時に起きて、引っ越ししました。まだ完全に移ってないのだけれど、大概の荷物は運んでしまった。で、一日働いて帰って来たら、いつもより少しよけいに疲れているような気がする。でも心配しなくてもいい。体の丈夫なことだけが取得なんだろうからね。
親父から手紙が来た。一昨日シアトルについたそうだ。これからカナダを一か月がかりでまわり、8月1日頃米国に来るらしい。15日までミネアポリスでの会議に出て、その後エヴァンストンの方に廻るらしい。いつ頃帰国するかわからないが、どうやら自動車でサンフランシスコまで、親父とその他三人を送ってもらいたいらしい。僕の車では到底、駄目なことはわかっているのだから、満足な車を買えば幾らくらいかと聞いて来た。もしサンフランシスコまで行けるのなら、洋ちゃんも一緒に連れて行きたい。
愈々、明日一日働いたら今週も終わり。土曜日はラッシュ・アワーを避けるため早く(6時頃)出るから12時前に着くのではないだろうか。何しろデニソンに行くのと違って何時にとは言えないから、大体12時頃、本部付近で何かしてたら?すぐ見つけられると思う。
今日はこれから水泳パンツを直して、色々買物などもする。
この手紙より、僕の方が先に着くかもしれない。すぐ会えるんだから、今日は短い手紙でいいだろう?
7月1日 I love you. 崇
(冒頭のテニスコートの写真は私と出あってからの'54年のものですが、ほかの4枚は出会う前の53年夏頃のものです。)

今日は日曜日。6月も残すは、あと三日。今週末はそちらに行けると思うと、元気も出る。自動車が故障なく行ってくれるといいんだが。
今日もテニスをした。少し慣れたとみえて、調子が出てきた。もっとも同じくらいの技量の人がいないので試合など出来ない。しても面白くないから・・・
今日、水泳しようかと思ったけれど、とても水は冷たそうだったから海辺(湖辺?)で日光浴。日焼けして色ばかり黒くなっても仕方ないんだが・・・ずっと果てしないミシガン湖を眺めて、ストーニーレイクはあの方向かな?なんて思いを巡らすと、なんだかますます淋しくなって胸がしめつけられそうになってきたので早く帰ってきた。
夏の間、土日曜日はもっぱらテニス、水泳などして過ごすことにした。無駄使いもしなくてすむし、体のためにもよいからね。

こんなに働いても体重はあまり減っていない。減らしたら怒るだろうと思って、ご飯を腹一杯食べている。もっとも朝は習慣のせいか(ケニヨンでは食べないから)コーヒー一杯位でどうしてもすましてしまう。それでも別にへばりもしない。一昨年・昨年も同じようにしていたんだからいいと思うがね。
キトウさんは中谷先生の車を買った。今日運転させてもらったけれど、やはり新しい(51年型)車はいいよ。あんなの運転できたらなあと思う。身分不相応だらうか?
明日からまた会社、土曜・日曜休みになると、月曜がよけい、いやに思える。
それから会社でSmith・Coronaのタイプライター(僕の兄貴の持っていたの)を売っているから、洋ちゃんが買うつもりがあるなら、買うよ。トランクは4,5種類、大きさによって分かれている。どんなのがいいか知らせてほしい。どうせ会えた時にゆっくり相談してもいいけれど。万年筆はウオーターマン位、高級品では、シェーファー、パーカーは見当たらない。ウオーターマンは有名だよ。その他、時計、ラジオ等、phonographは見当たらない。残念だ。洋ちゃんがシカゴに来れたら(夏の終わりにでも)、ゆっくり会社の陳列室で選んで注文出来るんだがね。
中略

昨日(土曜日)は2時間近くかけて洗濯した。大分ためてたから、やりがいがあったわけさ。しかし洗濯は自動洗濯機だからいいが、アイロンかけはいやだ。一枚ワイシャツかけたら20分かかった。で、止めた。第一夏は日曜以外、スーツを着る事もないからね。アイロンあてるのだけは苦手だ。
毎度土曜日はあれをしよう、これをしようと、普段働いていて出来ないこと(例えば荷物の整理など)をするつもりでいるんだが、結局何もせずじまいになる。シカゴの散髪はベラボーに高いので自分達でやることにした。当分虎刈りがはやるだろう。
何だか今日も現実的なことばかり、きたない字で書いてしまった様だ。ゴメンナサイ。
今、西山さん連中もでかけて、一人でこの手紙を書いている。
洋ちゃんは淋しいから本当の美も楽しみもわかると言ったけれど、人間ていうものは、そもそも淋しい存在ではないんだろうかね。どうも僕にはわからない。淋しいから洋ちゃんを愛したと言うかも知れない。しかし、淋しいから洋ちゃんの本当のよさを理解し得たと言うのならわかるけれど、もし洋ちゃんが 僕が淋しさをまぎらすために洋ちゃんを愛してるんだと言うのなら、文句があるね。僕は洋ちゃんの淋しさをまぎらす手段であってもかまわないけれど、洋ちゃんはそうではない。

ともかくあんまり僕に悲しい思いさせないでくれ。洋ちゃんが言おうとするところはよくわかる。僕自身淋しさに於いて人に負けない経験もしたし、今でも淋しい人間だ。でも洋ちゃんが何気なく言った言葉でも僕の心に針の如くつきささることもあるんだよ。
もう遅い(12時)明日は又出勤だから、また明日。オヤスミ。風邪ひかぬように。
6月27日 I love you. 崇

洋ちゃん、手紙ありがとう(28,9日付)
僕も元気です。今日は5時に起きて、引っ越ししました。まだ完全に移ってないのだけれど、大概の荷物は運んでしまった。で、一日働いて帰って来たら、いつもより少しよけいに疲れているような気がする。でも心配しなくてもいい。体の丈夫なことだけが取得なんだろうからね。
親父から手紙が来た。一昨日シアトルについたそうだ。これからカナダを一か月がかりでまわり、8月1日頃米国に来るらしい。15日までミネアポリスでの会議に出て、その後エヴァンストンの方に廻るらしい。いつ頃帰国するかわからないが、どうやら自動車でサンフランシスコまで、親父とその他三人を送ってもらいたいらしい。僕の車では到底、駄目なことはわかっているのだから、満足な車を買えば幾らくらいかと聞いて来た。もしサンフランシスコまで行けるのなら、洋ちゃんも一緒に連れて行きたい。
愈々、明日一日働いたら今週も終わり。土曜日はラッシュ・アワーを避けるため早く(6時頃)出るから12時前に着くのではないだろうか。何しろデニソンに行くのと違って何時にとは言えないから、大体12時頃、本部付近で何かしてたら?すぐ見つけられると思う。
今日はこれから水泳パンツを直して、色々買物などもする。
この手紙より、僕の方が先に着くかもしれない。すぐ会えるんだから、今日は短い手紙でいいだろう?
7月1日 I love you. 崇
(冒頭のテニスコートの写真は私と出あってからの'54年のものですが、ほかの4枚は出会う前の53年夏頃のものです。)