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夢の留学 3

スラバヤ丸船内で     八代洋子(旧姓久山洋子)

スラバヤ丸1

 スラバヤ丸は貨物船とはいえ、客室はゆったりとして快適だった。女子二人には一室が与えられた。

 グルー奨学生4人と、もう一人の留学生、吉田昌夫さんを加えた5名は一等船客なみの待遇を受けた。食事は一般の船員たちとは別の部屋で、船長、機関長、一等航海士、船医、無線長が同じテーブルにつき、晩にはフルコースの豪華な洋食が供された。細長のテーブルの先頭の席に船長が座り、その両側に私たち女子学生が席に着いた。
 

 二週間の船旅の間、昼間は晴れていればデッキに出て輪投げをしたり、夜は船長、機関長を交えて雑談をしたり、トランプ遊びをした。小柄な機関長は話好きで面白い人だった。何でもこなす器用な人で、抹茶をたててくれたし、手品も得意だった。手相も見てくれた。ちなみに私は「男に尽くすタイプ」と手相に出ていたそうだ。そういえば、同級生のボーイフレンドに冬休みの自由研究の宿題を全部引き受けて仕上げてあげたこともあった。

 写真上:5人の留学生

 写真下:前列左から、今井機関長、洋子、三輪船長、月井美智子
      後列左から、竹内一等航海士、小池船医、吉田昌夫、伊藤雄二、入江昭

スラバヤ丸2

  これからの4年間どんな運命が待ち受けているのだろうか?想像もつかなかったが、不安はなかった。ただ希望に胸を膨らませていた。

 航海の半ばになって北太平洋上が荒れだし、私は船酔いをして全く食事が喉を通らなくなった。いっときも船はとまってくれず、揺れ続けている。デッキに出ても荒い波とどんよりした空のほか何も見えない。空と海の境も漠然とした暗い灰色の世界に、小舟一隻、木の葉のように波間に揺れていると思うと不気味である。もう船はいやだ、帰りは飛行機にしなければなどと思ったりした。

 金門橋をくぐり、船が無事サンフランシスコに入港した時は快晴だった。空が抜けるように高く、青かった。桟橋に何人か立っていたアメリカ人が巨人に見えた。私は別世界に降り立った。

スラバヤ丸4

スラバヤ丸5



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