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心に生きる八代先生 3

心に生きる八代先生 3  

病気と八代先生       大郷 博

「おもしろいもの見せようか。これ術後3日目、これ5日目・・・。何ならどれか一枚あげるわ。好きなの持ってって」。
 
 脳腫瘍の手術をされた八代先生を見舞いにいった私。いささか緊張気味で病室に入った。そんな私を気遣うかのように、先生はニコニコしながら数葉の写真を見せてくれた。それは手術後の頭部を自分で撮った実に生々しい写真だった。先生は病気を茶化していた。
 
「この人は自分の病気の大変さを分かっていないのョ」と洋子夫人。そばでニヤニヤしている先生。
 なんぼ病気音痴の人であったとしても、その深刻さを知らないはずはない。大病をも茶化してしまうその姿に、私は先生の底知れぬすごさを見た。
 
 脳腫瘍と肺ガンの手術を終えて後、先生は産声をあげたばかりの「あぶらむの里」を訪ねてくださった。他の来客も重なり、その日、天然の岩魚の骨酒をふるまった。大ドンブリによく焼いた魚を入れ、それに熱カンの酒を注ぐ。岩魚のそれは天下一品の味。参加者全員で一口ずつ、まわしのみする。

 一周目、ドンブリが先生の前にきたとき、「これは私の大好きなものですが、現在は医者と女房に禁じられておりますので失礼します」と次に回された。

 二周目、「皆さんおいしそうですね、またニオイもかぐわしく」。

 三周目、「ちょっとニオイをかぐだけはいいですか」。
 
 四周目、「ちょっとなめるだけ、いいですか」。
 
 五周目、「ちょっと一口だけ、いいですか」。先生のあまりものいじらしさに、「先生、この際好きなだけのまれたらどうですか」と言った私。
 
 「そうか、そんなら、ちょちょっとだけいただくわ」。「あぁーうまい! 死んだ後、八代を偲ぶ会で、遺影にむかって献杯と言われるより、生きているうちに飲む酒の方がうまい!」。そう言い切った先生の一言、私は忘れることができない。
 
 すごい人だった。天国での再会が楽しみな人でもある。
 
 
 おうごう・ひろし師は1975年から三年間、当教会で八代先生を指導司祭として、勤務された。(当時、聖職候補生~執事)その後、立教大学チャプレンを経て現在、岐阜県・国府町で、人生の旅人と語る「あぶらむの会」主宰。

写真:入院中の八代崇         
聖ロカ入院記録3縮小写真下:脳腫瘍手術後の傷跡を自分で撮影したもの
聖ロカ入院記録2縮小







写真下:あぶらむの里での酒盛り。右端:大郷 博、左から二人目:崇
               
大郷さんとあぶらむの里で酒盛り



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