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八代主教の微笑と怒り

八代主教の微笑と怒り

  東京教区主教 竹田 真

 八代主教に最後にお会いしたのは2月11日、病状はかなり進行している様子で、重い気持ちで帰りました。以前、池袋の飲み屋で「俺は66歳で死ぬ」と笑い顔でつぶやいておられたのを思い出しました。主教はまだ65歳、酒を酌み交わしながらということもあってその時は気にもとめなかったのですが、今回は来年の総会までは頑張って下さるはずと願いながら、握手して別れました。その時も同じ笑い顔でした。

 八代主教は、かなり解決困難とみなされる挑戦に遭遇しても、笑い顔でそれを受け止め、それを楽しむかのように受容してしまう、優しくしかも図太い神経の持ち主でした。彼は歴史学者以上に歴史家でした。すべてを歴史のプロセスとみなして、「み心の如くなりますように」という祈りをもって自分自身もその歴史の現実の中に生きているという自己認識を貫きました。八代主教の寛容と微笑はその信念の表現でした。

 他方、歴史家としての八代主教は、もうひとつの側面がありました。歴史の中に、人間が変革出来る領域もあるが、聖なる神の領域があることを確信していたことです。聖職でも神学者でもその聖なる領域に踏み込もうとする言動に対しては、その不遜な欺瞞には怒りを表明し、その軽率な幻想には微笑が嘲笑に変わりました。この「微笑」と「怒り」は八代主教の人格の中でみごとに統合され、主教としての教導の基礎になっていました。八代主教を私たちに与えて下さった神に感謝と賛美を捧げたいと思います。
 
 1997年 4月29日 北関東教区時報 八代崇主教追悼記念号より
 東京教区主教 竹田主教は、当時北関東教区の管理主教を兼ねておられた。

今井神学院長就任式縮小

写真:聖公会神学院校長就任式 1995年 4月7日

前列 中央:今井丞治司祭新校長 
校長の左:竹田東京教区主教 
校長の右:八代崇首座主教
左端:田崎東北教区主教
右端:梶原横浜教区主教
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